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転性の日常と学園生活 プロローグ

  • 執筆者の写真: 結城リノンが書きました。
    結城リノンが書きました。
  • 2019年1月3日
  • 読了時間: 3分

 大きく、それは実に大きくポッカリと大地に口を開けた巨大怪獣かのようにも見え、しかし雄叫びもそれに応じた地響きすら、おおよそ大型生物が発したり動いたりすることに伴う振動も全く感じられない。


「まさか……隕石が落ちるなんて……」

「しかも……こんな近距離に……」


 少年の頃の私、睦月葵は両親と来ていた旅行先のホテルの部屋にいた時、とてつもない光と共に轟音が轟いた。地響きすら一瞬で命の危険すら感じる間もなく、その衝撃はわたしたちを襲った。

 怯える両親をよそに、何に対しても興味を示してしまう当時の葵は、近くに落ちたであろう隕石の様子を見に行こうと、両親の静止も振り切ってクレーターの元に向かっていた。


 今思えば、あの時あのクレーターを訪れなければ。とあとになって公開してしまう。そして、たどり着いた私は、そのクレーターの大きさに圧倒されていると、体に衝撃が走った。


「痛っ!痛っ」


 それは、体のアチラコチラから、成長期に入る年頃でもないのに、骨が伸びるような独特の痛みが体中に広がる。


「いたい……痛すぎ……」


 その痛みは喉にも達し、おおよそ発言すらできないほどになってくる。そして、数時間にも感じる痛みの渦は、しばらくすると収まってきた。それと同時に私は、違和感を覚えることになる。


「さっきの痛み……なんなの?」

「あれ?声……」


 よく女の子に間違われたるような中性的な容姿をしていたが、流石に男子なので両親が女装させようとするときには、必死に逃亡したことがあった。しかし、この時。私は声が男子が発するような声ではなく、まるで少女のような声を発していた。

「どこかに女の子でも……」

「あれ?これ。ボクの声?」


 いささか目線が低くなったような気がしていたが、周囲は夜とはいえ野次馬がチラホラとクレーターを囲んでいた。そこには、妊婦や葵と同年代かと思うほどの年代の子も野次馬に紛れ込んでいた。

 体中の痛みがあったことで不安になってきていた葵は、近くに来ているであろう両親を探し始める。その道中、小川が流れていたので、なにげに覗き込むとそこには……


「……誰だろう。この可愛い子……」

「……ん?同じ動き……」


「ボク?!ボクなの?これ」


 微かに男の時の面影は残っているものの、そこには、しっかりとした「女の子」が存在していた。しかも、服は男のときの格好のままのため、微妙にブカブカな服装になっていた。

 思えば、あの頃から葵の生活は一変した……。なかなか信じてもらえない両親と、信じた途端に「女の子が欲しかったのよ」とどこに仕舞っていたのかわからない女の子用の服を持ってきたりと、本人の心配を他所に両親は大喜びしていた。

 それから、テレビで流れるニュースはひっきりなしに隕石のニュースを行っていたが、葵のような突然性別が変わった。などのニュースなどはちっとも放送されずにいた。

 

それから数年後……………


 数週間、短いときには数日置きに性別が入れ替わることのあった葵のもとに、入学祝いのお金と共に学園への招待状が自宅に送られてきた。


「国立 颯妃《そうひ》学園 入学案内」


 当然のように親戚・両親のそれぞれに確認してもこの学園に願書を送ったことなど無く、それ以前に親戚一同、この学園があることすら知らなかった。


「どうする?葵。」

「どうするも何も……もらっちゃったんでしょ?お金」


 通常の学園であれば、入学祝い金は確定してからの振り込まれる場合が多い中、この学園に関しては、入学案内に祝い金が同封されていた。怪しさ満点ではあるが、両親は満更でもない顔をしていた。


「その顔は、いけってことでしょ?」

「わかる?」

「分かるも何も……顔に出過ぎ……」

「わかったよ~」


 祝い金をすでにもらってっしまったことで、目を輝かせている両親にとって、率先していってほしいような眼差しで葵を見ていた。

それからというもの……。あっという間に身支度された葵は、両親に気持ちよく学園へと追い出されたのであった。もちろん衣類の中には男子用の服と女子用の服が梱包されていた。

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