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俺の妹と妹Vtuber(イモチューバー)のシスターコンプレックス プロローグ

  • 執筆者の写真: 結城リノンが書きました。
    結城リノンが書きました。
  • 2019年1月7日
  • 読了時間: 4分

 技術的転換点に入った人類は、ある種の親和点を迎えた。ナノサイズで基盤を印刷できるようになったことで、有機ELを使ったモニターはコンタクトサイズになり、同時に通信端末と化した。


 コンタクトが苦手という人は、骨振動内蔵のメガネ型のウェアラブルデバイスが登場し、人々の生活を潤わせていた。


 MRの登場でリアルとバーチャルの境界線が曖昧になったことで、人々の生活はさらなる進化は果たすことになった。人々の生活は、飛躍的に向上し生活スタイルは別次元の物となっている。


 その日必要なものの買い物などは、その場でできるようになり、モールという概念がバーチャルのものとなり、必要なものが全てバーチャルで済むようになってきた。それでも、ひとつだけ変わらなかったものがある。


 それは、個人的なMR環境の構築である。パーソナルMR空間では、許可した人しかその環境を共有できないパーソナルMRスペースとなっている。そのことで、他の人には迷惑はかからないというシステムになっている。


「なにしてんの?おにぃ」

「いやね。妹に夜食でもっておもって……」

「えっ!、ほ、ほんと?」

「あ、いま。期待した?」

「べ。別に……」

「これは、リアルの妹のほうだから……」

「あぁ。そっか。」

「あからさまに、ガッカリするんじゃないよ。」

「べ。別に。がっかりしてないし……」


 彼女は、かほで妹系Vtuber。つまり、イモチューバーと言うやつである。見た目もアレンジが可能で、かほは身長と銀髪こそ翼の妹の夏穂と似てはいたが、夏穂とは異なり、クールタイプで妹のそれとは全く異なっていた。


 Vtuberの登場から数年経ったこの頃は、手軽に自分の分身としてVtuberシステムを使うようになっていた。分身という位置づけではあるが、常にというわけではなく、それ以外は人格解析によって組み上げられたAIが、分身を操作する。


 その時の記憶や行動履歴は、しっかりと情報データとして、本体となる個人へと通信履歴が残るようになっている。そして、視覚データも共有されることで、視覚の端にアバターとしてのVtuberの視野が表示されるようになっている。


 操作しない状態にする時に、基本行動はAIが行うが重要な判断に関しては、選択項目が出ることもあるが、ほとんどの人がAIの判断に任せる事が多くなっている。そのことで、リアルとMR上のアバターとしての位置づけのVtuberとなっている。


 そして、このパーソナルMR領域は、パーソナルという名前だけあってパスワードによって、認証されない限り共有されないようになっている。そんな翼(つばさ)のリアルの妹は、自室で宿題をしているらしい……


 ツンツンの妹。夏穂(なつほ)は、学校に行く傍ら、小説を書いているらしいが、よほど恥ずかしいらしく、兄の翼は一歩たりとも夏穂の部屋に入ったことすらなかった。そのため、決まって夜食などは部屋の前に置いて合図をするのが決まりとなっている。


「相変わらず。相手してくれないの?リアルの妹。」

「まぁ。忙しいんじゃない?かまってほしくないときもあるさ。」

「にいさん……」

「どうした?珍しい反応もするもんだな。」

「は、はぁ?き、気の所為じゃない?」


 夏穂の夜食の支度を終えた翼は、二階の角部屋にある妹の部屋へと向かう。そんな時も、かほはついてくることが多くあり、翼の周りはいつも妹的な存在がそばにいる事になっている。


 しかし、この時はちがって、リビングルームに待っているということだったので、翼は不思議には思ったものの、そのまま夏穂の部屋へと向かった。夏穂の部屋をノックはするが、きまって応答なしなのがこれまでの当たり前だった。しかし……


コンコン!


『まぁ。出てこないよなぁ~夢中になってるだろうし……』


がちゃ!キィィィィ。


『えっ?』

「あ、ありがと。にいに。」


 久しぶりにみた夏穂の姿は、抱きしめるとすっぽりと腕の中に収まってしまいそうな体に、きれいな銀髪が肩まで伸びている。いかにも“妹”を地で行くようなかわいい妹である。


「あ、あれ。ど、どうした?きょうは。」

「い、いや。たまに。さ……」

「あ、あのさ、夏穂。夢中になるの良いけど……」


 久しぶりに見た夏穂の可愛さと、兄として心配する気持ちが空回りし、どこぞの不審者の用になってしまう翼。当然、警戒してしまう夏穂。こんなやりとりが数年続いていた。


「あ、あぁ。ごめん。程々に頑張ってくれ。じゃぁ」

「…………」

「にぃ……」

「えっ?」


 気を使い立ち去ろうとした翼の背中に向けて、かすれるような言葉が夏穂から、聞こえてくる……


「に、にぃにも。ちゃんと。や、やすんでね」


ばたん!


 そういって、めずらしく兄の翼と対面した夏穂は、用意された夜食を持っていくと、あっという間に扉を閉めて、部屋にこもってしまう。そうして、次の日にはしっかりとキッチンに洗ってある食器が並べられているのである。


 引っ込み思案な妹の夏穂ではあるが、さりげない所でしっかりとしている翼の自慢の妹でもある。そんな妹の夏穂にも、秘密があって……


『にぃに……』


 そんな、なんだかんだで仲のいい兄妹とバーチャルのイモチューバーの日常が始まります。

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